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アンテナ・無線に関する豆知識

接地型アンテナのためのアース(RFグランド)

■接地型アンテナのアースは等電位面
あえて「アース」という言葉を使いたくないのが、接地型アンテナの為のアースです。アースというよりむしろアンテナ系の一構成部品と考えたほうがよいかもしれません。接地型アンテナというと、代表的なものに1/4波長接地型垂直アンテナが例として用いられます。大地の上に絶縁体を介して長さが1/4波長のエレメントを立て、そこに同軸ケーブルの芯線側を、そして網線(シールド)側を大地に接続します。大地表面が鏡のような働きをし、あたかも垂直ダイポールアンテナがあるかのようなイメージとしてアンテナが動作します。実はこれはあくまでも理論的(理想的?)なお話で、大地表面の電位が等しい、すなわち等電位面であるという仮定のもとに成り立つ話しです。もし大地表面が等電位面であるなら、大地表面が導電性の良い導体ということになるのですが、実際には大地の土壌等で接地抵抗が生まれてしまいます。 ならばわざわざ大地でなく、広い導体の板の上に垂直にエレメントを立てれば導体板が等電位面として働くわけです。 接地型アンテナにおいて「アース」と呼んでいるものの実態はこの「等電位面」なのです。つまり必ずしも大地表面でなくても、あるいは大地に接続されていなくても等電位面が形成されれば良いのです。一番良い例はモービル用のアンテナで、特にHF用のものの多くは「接地型」として動作します。ところがこの接地型のモービルアンテナは大地表面に取り付けるわけではなく車のボディに取り付けて使用します。しかも車はタイヤのゴムを介して大地とは絶縁された状態になっています。ところがこの場合でも接地型のモービルアンテナはきちんと動作します。これは車のボディ(金属表面)をアース、すなわち等電位面に見立てているからで、アースだからと言っても大地に接続されている必要は無いのです。アースというとどうしても、アース棒を地中に埋めん込んでそことの間を導線で結ぶという先入観を持っている方も少なくないようです。 従って接地型アンテナのアースは、「アース」というより、「RFグランド(高周波グランド)」と呼んだ方が適当かもしれません。

■グランドプレーン
グランドプレーンいわゆるGPアンテナ、グランドプレーンアンテナはお馴染みのアンテナです。給電部付近から横に出ている数本のエレメントが、実は等電位面を作る為のアースの役目をしているのです。理想的には、円形の導体板を用いれば良いのですが、そうすると風などの耐久性や、部品のコストが高くなってしまいます。
そこで、給電部から放射状にエレメントを張ることでアンテナとして動作させるのに必要な基準電位としての等電位面を擬似的に作っているのです。このような働きをエレメントをラジアルと呼びます。ラジアルの本数は理論的には円盤にできるだけ近くなるように放射状に本数を多くした方が良いのですが、現実的にはある程度の本数で良好に動作してくれます。
ではいったい何本のラジアルを設ければ良いのか?ホントの答えは実験をしてみないと最小かつ最適な本数はナントも言えないのが実状です。しかし、一般的に言えるのは3.5MHzや7MHzのように低い周波数で使用する接地型アンテナの場合にはラジアルの本数を多く設けることでアンテナの効率が良くなります。また430MHzや1200MHz等のように高い周波数の場合には、ラジアルの本数は少なく3〜4本でも良好な動作をします。 これは接地型アンテナのアースに必要な電気容量(キャパシタンス)が周波数によってことなる為で、低い周波数ほど容量が必要となります。

■ベランダの手すりもアース
近年、屋外防水型オートマチック・アンテナチューナーを使ってマンションのベランダに接地型アンテナを取り付けておられる方が多くなってきました。この場合、オートマチックアンテナチューナーのアース(RFグランド)としてベランダの金属手すりを使用することができます。ただし、いかなる場合でも良好なRFグランドとして動作する訳ではなく、手すりの形状や材質、手すり金属の表面積によって能力が異なってきます。HF帯の低い周波数で使用する場合には手すり全体の表面積が広くなければ、アースとして必要な電気容量がとれず良好なRFグランドが得られないことがしばしばあります。時々聞く話ですが、「ベランダで良好なアースがとれないので、洗濯機用のコンセントのアース端子に導線で接続してみました」なんてケースがあります。たまたま上手くいくこともあるかもしれませんが、電力保安用のアースと接地型アンテナのアースでは意味がまったく異なり、アンテナの理論上は意味のない行為ですのでおすすめはできません。(笑)冗談はさておき、場合によってはアンテナからの不平衡電流(高周波電流)を屋内に配線されているアース線に流すことになります。すると屋内に配線されているアース線が不要な輻射の為のアンテナとなってしまい各種電波障害の原因ともなりかねませんので注意が必要です。

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